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2.4 赤血球造血刺激因子製剤(ESA; Erythropoiesis-stimulating agents)に対して低反応性の貧血

透析百科TOPページ 2.4 赤血球造血刺激因子製剤(ESA; Erythropoiesis-stimulating agents)に対して低反応性の貧血 1.ESA低反応性貧血あるいはESA抵抗性貧血の定義 エポエチン(EPO)を週3回、1回3000単位(週当たり9000単位)静注しているにもかかわらず、あるいはダルベポエチンエン(薬)を週1回、60μg静注しているにもかかわらず、目標ヘモグロビン濃度(10-11g/dl)を達成できない場合に、このような貧血をESA 低反応性貧血あるいは ESA 抵抗性貧血と定義する[1]。     ■ ダルベポエチン アルファ ネスプ (キリン) 2.ESA低反応性あるいはESA抵抗性の指標 週当たりのエポエチン投与量を透析後体重(kg)とそのときの血液ヘモグロビン濃度(g/dl)で割った値をESA抵抗性(ERI; Erythropoiesis resistance index/erythropoiesis-stimulating agents resistance index)の指標とするよう提案されている。 ERI=週当たりのエポエチン投与量(U/週)/ [透析後体重(kg) x  血液ヘモグロビン濃度(g/dl)] 以上は、エポエチンを使用している患者でのESA抵抗性の指標であるが、これをダルベポエチンを使用している患者にも適用できるように、1 週間あたりの μg 単位のダルベポエチン投与量に 200 を掛け合わせた値は 1 週間あたりのエポエチン投与量(国際単位)と等価であると仮定して、 ダルベポエチンに対する抵抗性が算出されている。 ERI=週当たりのダルベポエチン投与量(U/週) x 200/ [透析後体重(kg) x  血液ヘモグロビン濃度(g/dl)] 近年、より長時間作用型のエポエチンベータペゴル(CERA)が臨床使用されるようになった。しかし、エポエチンベータペゴルのエポエチンへの換算比率はまだ確立されていない。 いずれにしても、それぞれの ESA 間の力価換算比率はかならずしも正確なものではない。したがって、エポエチンの ERI とダルベポエチンの ERI を比較する場合には、ダルベポエチンからエポエチンへの力価換算比率は必ずしも正確なもの...

2.3 ヘマトクリット値の上昇と透析効率

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透析百科TOPページ 2.3 ヘマトクリット値の上昇と透析効率 腎性貧血の患者への遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)の投与によりヘマトクリット値が上昇すると、クレアチニン、リン、カリウムのダイアライザー・クリアランスがいくらか低下し、これらの物質の血漿濃度はいくらか上昇する。これは、ダイアライザーを流れる血流量が不変でも、血漿流量は低下するためである。ただし、尿素については、赤血球膜を自由に通過するため、クリアランスは血漿流量低下の影響を受けない。すなわち、Kt/Vはヘマトクリットの変化の影響を受けない[1]。 ヘマトクリット値と、諸物質のダイアライザー・クリアランス     文献 1. Buur T, et al: Secondary effects of erythropoietin treatment on metabolism and dialysis efficiency in stable hemodialysis patients. Clin Nephrol 34: 230, 1990. 透析百科TOPページ

2.2 心疾患患者の目標ヘモグロビン濃度

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透析百科TOPページ 2.2 心疾患患者の目標ヘモグロビン濃度 1.大規模調査の結果 Besarabらは、うっ血性心不全あるいは虚血性心疾患を有する1233名の透析患者を無作為に2群に分け、一方の群の目標ヘモグロビン濃度を14g/dL(ヘマトクリット値にして42%)、他方の群の目標ヘモグロビン濃度を 10g/dL(ヘマトクリット値にして30%)として遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)を投与した(NHCT study)。ところが、目標ヘモグロビン濃度を14g/dL とした群で、目標ヘモグロビン濃度に到達する前に、すでに死亡率が有意に上昇したため、29ヶ月で研究は中止となった[1]。それぞれの患者群の中では、ヘモグロビン濃度が高いほど死亡率が低かったことから、高いヘモグロビン濃度のみが死亡率の上昇の理由とは考えにくいとされている[2]。 目標ヘマトクリット値と死亡・心筋梗塞のリスクの関係 一方、ヘモグロビン濃度の変動が心血管系合併症の原因であるとの報告もある[3]。例えば、ヘモグロビン濃度が急激に低下する際に心血管系の合併症が多発する。この結果は、エポエチン-アルファ、エポエチン-ベータ、ダルベポエチン-アルファなどの造血刺激因子製剤(ESA)の減量は緩徐におこなう必要があることを示唆している。 2.目標ヘモグロビン濃度 上記の結果は、うっ血性心不全あるいは虚血性心疾患を有する腎性貧血の血液透析患者に遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤を投与する際にも、目標ヘモグロビン濃度は通常どおりでよいことを示している。       文献 1. Besarab A, et al: The effects of normal as compared with low hematocrit values in patients with cardiac disease who are receiving hemodialysis and epoetin. N Engle J Med 339: 584, 1998. 2. Adamson JW, et al: Erythropoietin for end-stage renal disease (editorial). N Engle J Med 339...

2.1 目標ヘモグロビン濃度

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透析百科TOPページ 2.1  目標ヘモグロビン濃度 1. ヘモグロビン濃度とヘマトクリット 透析分野では、伝統的に貧血の指標にヘマトクリット値を使用することが多い。しかし、透析以外の分野では、ほとんどの場合、貧血の指標にヘモグロビン濃度を使用する。透析の分野でも、近年、ヘマトクリット値に代わってヘモグロビン濃度を使用する傾向にある。ヘモグロビン濃度に 3 を掛るとおおよそのヘマトクリット値が得られ、あるいはヘマトクリット値を 3 で割るとおおよそのヘモグロビン濃度が得られる。 2. 造血刺激因子製剤(ESA) エポエチンアルファやエポエチンベータなどの遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)の開発により、腎性貧血の改善が可能となった 。           その後、ヒトエリスロポエチン製剤にもダルベポエチンアルファなどの第2世代が現れ、これにともなってヒトエリスロポエチン製剤(EPO)という名称に代わって第2世代をも包括する造血刺激因子製剤(ESA)の名称が用いられるようになった。   ■ エポエチン アルファ   (遺伝子組換え)epoetin alfa エスポー (キリン) ■ エポエチン ベータ   (遺伝子組換え)epoetin beta エポジン (中外) ■ ダルベポエチン アルファ ネスプ (キリン) ■ エポエチンベータペゴル            ミルセラ            (中外) 3. 血液透析患者の目標ヘモグロビン濃度 2008年版日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」では、週3回の血液透析を受けている患者に対して以下のようなESA 療法における目標ヘモグロビン濃度を推奨している[1]。 a.  週の最初の血液透析前に仰臥位で採血した場合、推奨する目標ヘモグロビン濃度は 10〜11 g/dL(ヘマトクリット値にして 30%〜33%)である。ヘモグロビン濃度が 12 g/...

1.10 透析スケジュール

透析百科TOPページ 1.10 透析スケジュール 1.間欠治療における透析頻度 もっとも理想的な血液透析は、24時間連日連続透析であろう。しかしこのような血液透析は、社会的、経済的にも、また技術的にも実現不能である。そこで、連続的という要素を諦め、間欠的としたのが現在の血液透析である。間欠的な血液透析を行おうとすれば、当然、血液透析を行っていない時間が存在し、その時間(血液透析が終了してから次の血液透析が始まるまでの時間)には尿毒症物質が体内に蓄積していく。そして、これが生体に悪影響を及ぼし、何らかの合併症を引き起こす 原因となるであろうことは容易に想像できる。例えば、体内への過剰な水の貯留は、心血管系に対して過大な負荷を与えることになるだろう。また、血清リン濃度の上昇は、異所性石灰化の原因となるだろう。そして、血液透析を行っていない連続時間が短かければ短いほど、この機序による合併症の発生は少なくなると考えられる。 a.間欠治療の種類 理想的には連続的であるべき透析治療を週あたり何回かに分散しておこなう場合には、いくつかの分散の仕方が考えられる。現在は、週あたり3回に分散して、週日は1日おきに、週末は日曜日を挟む2日 空きで血液透析を施行する治療スケジュール(仮に、これを通常透析と命名しておく)、あるいは週あたり 3.5 回に分散して、週末にも日曜日を挟む1日空きで血液透析を施行する治療スケジュール(隔日透析)、週日は連日透析を行い、日曜日のみ治療を休む治療スケジュール(頻回透析)がある。当然のことながら、血液透析を行っていない連続時間は、週 6 回連日で血液透析を行う頻回透析で最も短く、隔日透析がこれに次ぐ。とくに週末においては、頻回透析でも隔日透析でも、血液透析を行っていない連続時間が約 2日間であるため、体内に貯留する水分量の最大値は等しいという点では、両治療スケジュールは同等である。これに対し、週あたり 3回に分散して血液透析を行う透析治療スケジュールでは、週末における血液透析を行っていない連続時間は約 3日間となり、とくに週末における体内への過剰な水の貯留による心血管系への負荷や血清 リン濃度の上昇にともなう異所性石灰化の促進圧力は強いと想像される。 b.透析頻度と合併症 頻回透析では、透析間における体内への過剰な水の貯留によ...

1.9 透析量プログラム

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透析百科TOPページ 1.9 透析量プログラム 1. 透析量プログラム[1] 各透析の開始前にコンソール(監視装置)に目標とするKt/V値を入力すると、このKt/V 値が得られる透析条件が算出されるプログラムである。このプログラムは、尿素動態モデルのひとつである局所血流モデルを基に作成されている。現在、計画透析プログラムは、日機装株式会社製のコンソール(透析用監視装置 DCS-27、DCS-28、DCS-73)に搭載されている。 透析量プログラムが搭載されているコンソールでは、まず、月に1回、定期採血の日に、実測の透析前後BUN、その日の透析の透析時間、血流量、透析液流量、ダイアライザの特性である KoA、除水量をモニター画面に入力する。この操作により、体液量に諸パラメータの有する誤差の補正値が加味された「体液量+補正値」が算出される。この値は、1ヵ月後に再び新たな「体液量+補正値」が算出されるまで、コンソールに記憶されている。 それ以後の1ヶ月間は、透析ごとにコンソールのモニター画面に対して目標とするKt/V値、「体液量+補正値」と共に予定透析時間、血流量、透析液流量、ダイアライザの特性である KoA、除水量を入力する。これにより、モニター画面には透析後にこの Kt/V 値が得られる透析液流量が表示される。     2. 透析量プログラムの精度 延べ 60名の患者において目標 Kt/V 値と達成された Kt/V 値(実測の Kt/V 値)とを比較したところ、図に示すように、透析後には目標とした Kt/V 値(X)どおりの実測 Kt/V 値(Y)が得られていた(Y=1.008+0.003;r=0.973;n=60)。そして、目標 Kt/V 値(X)に対する実測 Kt/V 値(Y)の平均誤差(目標 Kt/V 値と実測 Kt/V 値との差の平均値)は 0.04 にすぎなかった。 なお、Kt/V 値は血流量、透析液流量、透析時間、ダイアライザの特性だけでなく、除水量の影響も受ける。そして、除水量は透析ごとに異なる。したがって、透析開始前に算出した目標とする Kt/V 値を実現する透析液流量は、たとえ目標とする Kt/V 値を変更しなかったとしても、その透析でしか有効ではないことに注意する必要がある。     3. ...

1.8 採血のタイミング

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透析百科TOPページ 1.8 採血のタイミング 血液中尿素窒素濃度(BUN)は、透析終了(尿毒症物質の除去停止)後、約 30 分間上昇し続ける。この透析終了後の BUN の上昇を BUN のリバウンドと呼ぶ。この項では、Kt/V などの透析量を算出する際、このリバウンド過程のどの時点で測定した BUN を用いるべきか検討する。   1. BUNのリバウンドの機序 ダイアライザで浄化された血液の一部が、静脈針から動脈針に流れ、再び動脈針を経てダイアライザに流入している患者、すなわち体外循環している血液の一部がダイアライザとシャント血管の間で再循環している患者では、約 30 分間続く BUN のリバウンドの最初の1分間の上昇は、主にシャント血管とダイアライザ間の血液の再循環と血液の心肺再循環に関連して生じている。そして、その後の BUN の上昇は、尿素が除去されにくいために尿素窒素濃度が他よりも高い生体内区域の尿素濃度と、尿素が除去されやすいためこれが他よりも低い区域の尿素濃度が均一になる過程である。なお、血管内(血液)は尿素の除去されやすい区域に属する。 a. シャント血管とダイアライザ間の再循環 シャント血管とダイアライザ間に血液の再循環があると、通常の採血ポイント(血液ポンプの上流)から採血した血液サンプルは吻合部からシャント血管に流入した血液にダイアライザで浄化された血液の一部が混入したものとなる。したがって、このような血液サンプル中の尿素窒素濃度は吻合部からシャント血管に流入した血液中の尿素窒素濃度よりも低くなる。今、透析液の流れを止めるなどしてダイアライザにおける尿素の除去を停止すると血液ポンプの上流の採血ポイントを通過する血液中の尿素窒素濃度は徐々に吻合部からシャント血管に流入した血液中の尿素窒素濃度に近づいていく。すなわち、BUN のリバウンドが生じる。 b. 心肺再循環 心肺とダイアライザ間には必然的に 5% 程度の血液の再循環が生じている。すなわち、すでにダイアライザで浄化された血液のうちの 5% 程度が心肺を循環して再び体外循環する。したがって、透析終了と同時に通常の採血ポイント(血液ポンプの上流)から採血した血液サンプルには、すでにダイアライザで浄化された血液が 5% 程度混入している。これは、透析終了と...

1.7 男女別の至適透析量

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透析百科TOPページ 1.7 男女別の至適透析量 最近、高い透析量は女性では死亡のリスクを減少させるが、男性では必ずしも死亡のリスクを低下させないと報告された。CMS(the Center for Medicare & Medicaid Services)データの解析によると、尿素除去率が増大するにしたがって、男性および女性のいずれにおいても死亡のリスクはほぼ同じ率で低下していく。ところが、図に示すように、尿素除去率が 65% を越えると、男性の死亡のリスクの低下程度は女性のそれよりも緩徐になっていく。例えば、女性では、尿素除去率が 70〜75% の場合には 65〜70% の場合よりも死亡のリスクは19%低く、尿素除去率が 75% 以上の場合には 65〜70% の場合よりも死亡のリスクは31% も低い。これに対し、男性では、尿素除去率が 70〜75% の場合には 65〜70% の場合よりも死亡のリスクは 10% 低いだけであり、尿素除去率が 75% 以上の場合にも 65〜70% の場合より 13% 低いにすぎない[1]。 DOPPS(the Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)データの解析でも同様の結果が得られている。     文献 1. Port FK, et al: High dialysis dose is associated with lower mortality among women but not among men. Am J Kidney Dis 43: 1014-1023, 2004. 透析百科TOPページ

1.6 透析時間

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透析百科TOPページ 1.6 透析時間 1.   透析時間と透析量 至適透析の指標としての透析時間の位置づけには様々な議論がある。患者の体液量 (V) が一定であるなら、Kt/V は、透析中の尿素クリアランス(K)と透析時間(t)の積 (K×t) のみによって決定され、尿素クリアランスと透析時間のそれぞれがどのような値であるのかは問題とはならない。実際、透析時間を短縮しても (すなわち短時間透析を実施しても)、Kt/V がある一定の値を維持していれば生命予後は悪化しないことを示す報告もあり、これは透析時間が独立した至適透析の指標ではないことを示していると言えるだろう。透析時間を治療への拘束時間ととらえるなら、透析時間を短くすることは患者の拘束を軽減することであり、これは好ましいことである。 しかし、短い透析時間では、同じ除水量でも単位時間あたりの除水率は大きくなり、心循環器系への影響が大きくなることは容易に想像できる。また、単位時間あたりの溶質除去率も高くなるので、不均衡症候群などの透析合併症も発生しやすい。逆に、長い透析時間では、拘束時間が長くなる代わりに、これらの問題は起こりにくいと予想される。実際に、長時間透析を実施することによって、患者の血圧管理が容易となり、ひいてはその生命予後が極めて良好となったことを報告している研究者もいる[1,2]。これは、透析時間が独立した予後指標である可能性を示唆している。     2.  透析時間と死亡のリスク 透析時間は Kt/V を構成する一因子であるため、透析時間と Kt/V との間には強い相関がある。従って、たとえ透析時間の長い患者の生命予後が、それの短い患者より優れているとしても、それが長い透析時間そのものによって生じたのか、それとも長い透析時間に必然的に伴う大きな Kt/V によって生じたのかを弁別することは実際には困難である。 1997年度の日本透析医学会統計調査委員会の報告では、透析時間と Kt/V のそれぞれの影響を多変量解析を用いて数学的に弁別している。これによると、Kt/V の与える影響を補正した後でさえも、透析時間と生命予後との間には明確な関係が認められた[3]。これは、透析時間が、Kt/V とは独立した至適透析の指標であるこ...

1.5 TACBUN(Time-Averaged Concentration of BUN)

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透析百科TOPページ 1.5 TAC BUN (Time-Averaged Concentration of BUN) 1.TAC BUN の定義 血清尿素濃度は、透析時には尿素の除去のために低下し、非透析時には尿素の産生のために上昇する。すなわち、血清尿素濃度は一週間をとおして下降と上昇を繰り返す。この下降と上昇を繰り返す血清尿素濃度を一週間をとおして時間的に平均したものが TAC BUN  である。 TAC BUN  を正確に求めるためには、週 3 回のそれぞれの透析前後の血清尿素濃度をすべて測定し、これら6つの血清尿素濃度を一週間をとおして時間平均する。     2.TAC BUN の算出法 a. 透析後の 血清尿素濃度と次の透析前の 血清尿素濃度から TAC BUN  を求める方法 血清尿素濃度を一週間をとおして時間平均するために、週 3 回のそれぞれの透析の前後に血清尿素濃度を測定するのは、臨床的に現実的ではない。そこで、しばしば、週の最初の透析後血清尿素濃度と週の2度目の透析前血清尿素濃度から式(1)を用いて近似値が算出される。 TAC BUN (mg/dl)= (週始め透析後BUN+週2度目透析前BUN)/2    (1) b. 平均尿素産生速度と平均尿素クリアランスから  TAC BUN  を求める方法 平均尿素産生速度と平均尿素クリアランスの比からも TAC BUN  を算出することができる。これは以下の事実に基づく。 体内での尿素産生速度(G)も体内からの尿素除去速度(E)も一定である平衡状態では、体内からの尿素除去速度は体内での尿素産生速度に等しい。もしそうでなければ、体内には尿素が無限に蓄積するようになるか、あるいは尿素がまったく存在しなくなるだろう。     G = E  (2) 一方、尿素除去速度は体内の尿素濃度(C)と尿素クリアランス(K)との積に等しい。   E = K×C   (3) 式(3)を式(2)に代入すると明らかなように、平衡状態では尿素除去速度は尿素濃度と尿素クリアランスの積に等しい。   G = K×C (4)...

1.4  低栄養の患者における適正透析量

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透析百科TOPページ 1.4 低栄養の患者における適正透析量 1.  多変量解析法により決定した適正透析量 適正 Kt/V 値を決定するため使用される、ロジステイックモデルあるいは比例ハザードモデルを解析する多変量解析法では、図1の(a)に示すように、死亡率を死亡のリスク値とみなしたうえで、Kt/V をいくつかに等分し、それぞれの Kt/V 帯に属する患者の死亡のリスク値を表示している。その際、それぞれの Kt/V 帯に属する患者の死亡のリスク値は実際の値ではなく、所属する患者数がもっとも多い Kt/V 帯における死亡のリスク値を1.0(対照)とした場合の相対的な値である。 多変量解析法で Kt/V と死亡のリスクとの関係を求める場合、「Kt/V 以外のパラメータの値は、すべての解析対象患者において対照とした Kt/V帯に属する患者の平均値に等しい」という仮定を設ける。したがって、「適正Kt/V値は1.2以上である」というガイドラインは、Kt/V 以外の何らかのパラメータの値が対照 Kt/V 群の平均値よりも極端に高い患者や極端に低い患者には適用できない可能性がある。そのようなパラメータのひとつに透析前血清リン濃度(以後、単にリン濃度とする)がある。     2.  透析前リン濃度と透析量 リン濃度は食事の量と内容によって変化するが、同時に透析量を変えた場合にも変化する。したがって、適正透析を考えるときには Kt/V 値が死亡のリスク値に与える影響だけでなく、リン濃度が死亡のリスク値に与える影響も考慮しなければならないと思われる。つまり、Kt/Vに関する死亡のリスク値とリン濃度に関する死亡のリスク値とを合わせた総合の死亡のリスク値が最小になる時の Kt/V 値を適正 Kt/V値としなければならないことになる。 しかし、Kt/V に関する死亡のリスク値とリン濃度に関する死亡のリスク値とを合わせた総合の死亡のリスク値を最小にしようとすると、リン濃度がリン濃度に関する死亡のリスク値が最小となるような値に近い値となるようにKt/Vを増やし、あるいは Kt/V を減らすことになってしまう。これは、以下に示すように、死亡のリスクに対する Kt/V のインパクトよりもリン濃度のインパクトの方が大きいことによる。 ...

1.3 至適透析量

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透析百科TOPページ 1.3  至適透析量 1.至適透析量の定義 ここでは、至適透析を「死亡率を可能な限り低くする透析」と考え、Kt/V あるいは尿素除去率(URR)などの透析量の至適レベルとは「死亡率(死亡のリスク)を可能な限り低くする透析量のレベル」と定義する。 Kt/V の上記の至適レベルは、Kt/V 以外のパラメータの値、とくに透析前血清リン濃度、nPCR、体重増加率などが、基準とした患者群(対照としたKt/Vの患者群)におけるそれぞれのパラメータの平均値と大きくは異なっていない場合にのみ、有効である。 なお、以下に述べる透析量に関する諸指標のレベルと死亡のリスクとの関係は、週3回の血液透析患者についてのものであり、他の治療条件(たとえば週2回や週4回以上の透析など)の患者には適応できないことに気をつけなければならない。     2.至適Kt/V a.  Single-pool Kt/V 日本透析医学会統計調査委員会は、多変量解析法を用いて single-pool Kt/V (以後、Kt/Vsp と略す)と死亡のリスクとの関係を求めた。同委員会の 2001年度の調査結果の解析によると、図1に示すように、Kt/Vsp  が 1.2 に達するまでは Kt/Vsp の増大にともなって死亡のリスクは急速に低下していき、さらに Kt/Vsp が 1.8 に達するまで Kt/Vsp の増大にともなって死亡のリスクはなお緩徐に低下していく[1]。したがって、この解析結果によると Kt/Vsp の至適水準は 1.2 以上であって、Kt/Vsp がこれよりも大きければ大きいほどよいことになる。同様に K/DOQI Guidelines 2000 でも、至適 Kt/V を 1.2 以上としている。これに対し、アメリカ多施設臨床試験である HEMO Study グループは、アメリカの平均 Kt/Vsp(1.32±0.09)よりもさらに大きな Kt/Vsp の透析を行っても死亡のリスクは低下しないと報告している[2]。   b.  Kt/Ve 日本透析医学会統計調査委員会は、ロジスティック回帰分析法を用いて Kt/Ve (以後、Kt/Veと略す)と死亡のリスクとの関...

1.2 透析量の指標

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透析百科TOPページ 1.2 透析量の指標 1. Kt/V a. 概念 Kt/V を得るために用いられるカイネティックモデルは、通常、尿素に関する single-pool モデルである。尿素に関する single-pool モデルでは、細胞内であろうが細胞外であろうが、尿素は体内の水分に均一の濃度で分布するとしている。そして、このモデルでは、透析とは体内の水分の一部をダイアライザに導き、この中から尿素を除去したうえで浄化された水分を生体内に戻すことであるとしている。 さて、Kt/V を、ダイアライザの尿素クリアランス(K)、透析時間(t)および体内の水分量(V)からなるひとつの数式と考えれば、その概念は容易に理解できるだろう。すなわち、透析による尿素の除去量はダイアライザの尿素クリアランス(K)が大きいほど、また透析時間(t)が長いほど多くなる。そこで、ダイアライザの尿素クリアランスと透析時間の積である Kt は、尿素の除去という点からみた透析量を表す。 ここで、体内の水分量が多ければ多いほど体内の尿素濃度の低下程度は小さくなり、一方、体内の水分量が少なければ少ないほど体内の尿素濃度の低下程度は大きくなる。そこで、体内の水分量が多い患者にも少ない患者にも Kt を等しく適用できるようにするためには、Kt を体内の水分量で補正して標準化しなければならない。すなわち、Kt を体内の水分量で割れば、単位水分量あたりの Kt である Kt/V が得られる。   b. Kt/Vを求める式 1) single-pool Kt/V ダイアライザの尿素クリアランス、透析時間および体内の水分量をそれぞれ実測し、これらの値から Kt/V を算出するのは現実的ではない。そこで、通常、Kt/V は、透析中の体内の水分の減少を考慮した single-pool モデルを解析することにより得られた Shinzato らの式[1]か、あるいはDaugirdas らの式[2]を用いて算出する。 Daugirdas の式は、尿素の産生を無視しているのでより簡便である。これに対し、Shinzato の式は、尿素の産生を考慮しているのでより複雑になっている。しかし、Shinzato の式には Kt/V とともに nPCR  も算...