4.2 nPCRと死亡のリスク
日本透析医学会統計調査委員会は、、ロジスティック回帰分析法を用いてnPCRと死亡のリスクとの関係を求めた。その結果によると、nPCRが0.9g/kg/day未満では、nPCRが小さければ小さいほど、死亡のリスクは増大する[1]。従って、nPCRは、0.9g/kg/day以上であることが望ましい。これは、他の研究者によって過去に報告されたnPCRの至適水準にほぼ一致する [2,3]。
また、日本透析医学会統計調査委員会の2000年度末の調査[4]によると、nPCRが0.9g/kg/day未満の患者では、nPCRが低いほど脳梗塞発症のリスクが高く、とくに0.5g/kg/day未満の患者では極めて高いリスクを示した。
ただし、nPCRの上記の至適レベルは、nPCR以外のパラメータの値、とくに透析前血清リン濃度、Kt/V、クレアチニン産生速度、食事の塩辛さ(非透析時における体内への1日あたりの塩分蓄積量/nPCR)などが、基準とした患者群(nPCRが1.1〜1.3 g/kg/dayの範囲にある患者群)におけるそれぞれのパラメータの平均値と大きくは異なっていない場合にのみ、有効である。
なお、具体的に nPCR を求めるには、日本透析医学会統計調査委員会が提供しているソフトウエアを利用するか、最近、報告された山本らの式を用いる。
文献
1. わが国の慢性透析療法の現況(1998年12月31日現在). pp.617-620, 日本透析医学会, 1999
2. Gotch FA, Sargent JA: A mechanistic analysis of the National Cooperative Dialysis Study (NCDS). Kidney Int 28: 526, 1985.
3. Acchiardo SR, et al: Morbidity and mortality in hemodialysis patients. ASAIO Trans 36: M148, 1990.
4.日本透析医学会統計調査委員会: わが国の慢性透析療法の現況 (2000年12月31日現在). pp.566-567, 日本透析医学会, 2001