【全腎協情報】
下肢重症化予防の夜明け
下肢末梢動脈疾患指導管理加算
杏林大学医学部 形成外科 大浦紀彦先生
今年の3月、医療制度が大きく変わり「透析と足に関してのしくみ」が新設された。今まで透析患者の足病の重症化を予防することについて、下肢切断を回避し歩行し続けられることを目的とするものである。これを使う立場の透析患者のみなさんに是非、この仕組みが出来た経緯とどのようなものかについて知っていただきたい。
2015年7月、日本下肢救済・足病学会と7つの学会が合同で秋野公造氏(参議院議員)を訪ね、下肢の重症化予防のための要望書を政府に提出した。その後、第7回日本下肢救済・足病学会(横浜)「足病治療の向上による重症化予防について」というシンポジウムを開催し、秋野氏と厚労省と学会、関連領域のオピニオンリーダーが集い、下肢重症化予防について討論しコンセンサスを得た。さらに、2016年1月20日、参議院本会議場にて秋野議員が塩崎厚労大臣に質問し、大臣より「糖尿病による足の障害などの合併症対策が重要」との回答を得た。これは極めて注目すべき発言で、厚労省が、初めて糖尿病の足病変対策について本腰をあげることを表明したわけである。これからの活動が認められ、2016年度診療報酬改定において、下肢末梢動脈疾患指導管理加算が新設された。
これは、透析クリニックが透析患者の日頃からチェックし、血流が少ない虚血(末梢動脈疾患)がみられる人を見つけ出して、足病治療を行う病院へ紹介する、早期発見、早期治療を推進する仕組みである。足の甲で脈を取って、脈が取れないときには、血流が少ない虚血である可能性があるので、足病(末梢動脈疾患)を見つける方法、血流がいいか悪いかを、機械を使った検査で行う。ABIという血圧計を手と足につけて手と足のの血圧の比を測定する方法や、SPP(皮膚灌流圧)という足の甲や裏に、レーザープローブと血圧計をつけて皮膚の血流の強さを測定する方法などがある。今回新設された医療制度では、ABIが0.7より小さい場合、またはSPPの値が40mmHgより小さい場合、足部への血流が乏しい可能性があるので、虚血の患者は、医療スタッフから状況説明を良く聞いた後で、専門病院を紹介受診することになっている。専門病院では、実際に血管が詰まって場合、バイパス術や血管内治療(カテーテル)などの血流を改善する治療を行う必要がある。さらに、虚血によるキズがある場合は、形成外科などでキズの治療を受ける必要がある。